2時間の旅行

妻の入院のためにスーツケースを押して大阪へ。
まるで旅行みたいである。

道中スーツケースに人目を感じたり、その目を自分自身、勝手に気にしすぎたり。
こんな社会情勢の中、旅行に行く奴などいない。

自分も人目など気にせずにいればいいのに
この赤いスーツケースがチャラチャラしているように見えて気になってしまう。

京都駅はるかのプラットフォームは運転士と清掃員だけしかいなかった。
自由席も数両に渡って誰もいない。乗車しているのは私たち二人だけ。

駅には新旧様々な列車が通過したり停車する。
本当に何十年も働いていると思われるコンテナを運ぶ機関車や、ミニマムなデザインでライト部分は一瞬、車のジャガーを思わせるような最新列車。普段鉄道には興味が無いのにこうして駅にいると、しっかりと造り込まれた、そしてバランスが良く格好いい列車が多いことに驚く。

駅自体や、駅周辺の建物のデザインも面白い。
気づけば完全にこの時間を楽しんでいる。
深く被った私の帽子とマスクの隙間から見える目は楽しげだったかもしれない。

この様子を暗い眼差しで清掃員に見つめられていた。

このパンデミックのさなか、旅行になど行けるわけもなく、さらに私たち二人は心肺に持病があるので家から出ることのリスクは人一倍高い。


でも楽しい。

京都駅の成城石井で買ったお弁当は気が利いた中身で美味しかった。

車内では妻とゆっくり話すことが出来た。今の社会のこと、特に失業者が増えたらどうなるのかについて、そして、私たちの仕事のこと、子供たちの教育や将来について。
思いつくまま話したので支離滅裂だったけど話して良かった。
今日の話をそのままにしておくのは勿体ないから、先ほど文章にまとめたところ。

人の目など気にしない

聡明な人が「人の目など気にしない」と言う。
この言葉は誰もが言えることでは無い。私など、まだ向けられてもいない人目を気にしたり、実際に非難を表現するような目にぶつかると、その日一日、時折思い出してはしんどい思いをしていまう。

でも今は「人の目など気にしない」という言葉が全ての人に必要になってしまったように思う。
もう何々ワッペンの製造が追いつかない。
◯◯ワッペンの次は、▲▲ワッペンが必要で、その次は□□ワッペン。
これは入院のためのスーツケースで旅行のためではありませんワッペン。

いや、本当に必要なのは、笑顔を剥がして、その上に貼る暗く冷たい顔なのでは無いか。

いやいや、私は冷たく暗い顔などしたくない。人は人だ。どこまでも足並みを揃えるわけにもいかない。暗い顔をしたら妻が心配して私も本当に悲しくなる。

人の目は気にしない。

そう。家族の幸せのためにも、人の目は気にしてはいけない。

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